[“トニー”の存在を兄二人が知ったのは、まだ彼がランドセルを背負っている頃。
何度か逢瀬を重ねた後だったか。
嬉しそうにいそいそとおやつを用意する姿を見られれば、ばれないわけがない。]
…そっくりでしょう?私もびっくりしたのよ。
[わざと茶化すように言ったけれど、泣き笑いの表情になってしまったか。]
[トニーがあまり顔を出さなくなる直前に、本当の兄かどうか聞かれた。
“トニー”相手に嘘をつけなかったけれど、]
…二人とも、大事な人よ。これからもずっと一緒…。
[曖昧な答えは、多感な時期の彼を苛立たせたことだろうか。
その真意に気づくことのないまま、時は過ぎる。]
また伸びたね。会う度に伸びているんじゃない?
[いつのまにか自分の背をこしてしまった少年にそんな軽口を叩く。
“トニー”は目線があまりかわらなかったのに。]
[けれど、声変わりして“トニー”と声も同じになった彼にやはり胸は騒いだ。]
(92) utatane 2010/10/01(Fri) 06時半頃