[彼との接点を切ってしまうのは悲しくて、無意識の言葉は自分を戸惑いへ突き落す。一体何がどうして"また"なのか。手繰り寄せる記憶の紐は先が見えぬまま、それは揺れる蜃気楼へ吸い込まれて、背を向けた《金》>>88に、そう、言葉を投げた。未だ白紙のページに浸みこむのは、輝く金のインク。ぽたり。一滴落ちれば徐々に広がって、晴らすは夢の、霞の向こう。それはいつの日か、再び文字を刻み始めるのだろう。本としての役目を終えた魂は、万年筆を握ったまま困ったように笑んで、肩をすくめてみせる。戸惑いはしたけれど、彼と親しくなりたい感情は確かな物として。故に訂正も加えぬまま。今はまだ、最初の一滴。少しだけその色が、鮮やかに光ったような気がした。]
(92) mzsn 2014/11/25(Tue) 22時頃