[急ぎ足で温室へ向かう道中、少しだけ昔を思い出していた。
女魔術師の名前はエミーネ。誠実を意味している。
何故、知っているのか。彼女の父親こそメスィフなのだ。
そして、自分の父親代わりでもあったから、エミーネとはまるで兄妹のように育った。
だけど、エミーネと顔を合わせたのは初対面の一度きり。自分はエミーネの成長を知り、エミーネの育った姿を見れど、彼女は自分を知らないも同然。少しだけ複雑だったが、それでもよかった。
回復系の魔術師に同行して欲しいと魔術師達の集まる部屋の扉を叩いた時、誰も手を上げない中、手を上げた彼女に「立派になったな。」と密かに思ったのだ。]
………おっさんにも見せてやりたかったぜ。
[メスィフをおっさんと呼ぶのは通常通りだ。
唯一、娘の立派になった姿を見れなかったこと、娘のことを認めてやれなかったことを悔やんでいたのを思い出した。]
(89) 2013/11/23(Sat) 23時頃