―Xday+4日後 PM6:00・ハルヒラシティアバター登録所―
[ここに訪れるのはおよそ一年ぶりの事だ。
アバターの変更にはそれなりの金額が掛かる。
あの時は貯めていた小遣い全て――『彼女』へと貢いでいた為に随分と減っていたが、ギリギリ間に合うだけの仮想通貨をアバター変更手続きへと注ぎ込んだのだ。
男達から掠め取った通貨は、結局手を付けることも殆ど無いままにネットバンクへと貯めこまれている。
今右手に握りしめているのは、手持ちのゲームを売り払った現金に両親に頭を下げて借り受けたものを足して漸く揃えた仮想通貨だ。
――借金の条件は通学と受験、そして暫くの小遣い禁止の約束。
所定の書式に入力したデータの顔写真は、リアルでの自分の姿そのもの。
もう偽るのはやめにしようと、そう誓ったから――そして何よりもしもまた彼女に会えるのならば、自分の姿でと望んだから。
受付番号を読み上げる機械音声にソファから腰を上げる。
長い事顔も出さなかった教室のドアを潜る事を思うと、胃を掴まれるような気の重さを感じるのは事実だった、けれど。
歩み出す足取りは軽く、手続きを終えるべく晶は受付へと向かった]
(88) nanono 2014/03/29(Sat) 01時半頃