― 館・キッチン ―
[飴色に輝く調度品に、様式を踏んだ作業空間。
オーブンは薪を使うものが用意されており、
訪れた者の生活水準に合わせて姿を変える様だった。
そのからくりは人智の及ばぬもの。
メカニズムを考えるほど愚かしくもなく、室内を見渡した。
先ずは作業台傍の椅子を引き、彼女の着席を誘い休息を。
本来ならば、ティールームで主人に余暇を過ごしてもらう所だが、
この状況下に置いて、自身の視界外に置く事など出来なかった。
彼女が傍に居てくれさえすれば、危険性を考慮せずにキャビネットを開き、瓶詰めにされた各種の茶葉を手に取り検分。
こんな時にも関わらず、失ってしまった日常を演出。]
―――…皆様、戸惑いがちでは在りましたが、
生への渇望とは他に変えがたきもの。
遅かれ早かれ、血が流れるやもしれませんな。
(86) 2014/07/13(Sun) 20時半頃