[魔力の集積を感じて、ざわりと肌が粟立つ。
思わずその場を飛び退くも、燭台からのロックオン>>76ははずれなかった。
ユリシーズによる「警告」がなされ、タバサの喉奥からはぐるぐる、と低い唸り声が漏れる。
ユリシーズの持つ魔術書には、タバサの真名が封じられていた。
タバサの真名は、人間には発音できない音で構成されており、触媒を通じて命を出される形となる。
つまりは、魔術書を何者かに所持されている限り、呪縛は解けないということ。
魔術書を持つ者に対しては、直接攻撃を行うことが出来ない。
無理矢理にでも強行すれば、傷をつけることも不可能ではないが、ひどく消耗してしまう。
抵抗しようにも、明らかに分が悪かった。
渋々ながらに腕を下ろし、直立姿勢に戻る。]
──う。…うう、う……うー……。
[見る見る間に瞳の表面が潤み、膜がかかったように視界が霞む。零れてしまわぬよう、瞬きを耐え、唇を噛んだ。]
(86) 2012/10/19(Fri) 05時半頃