[〝彼〟を食った虚は、 散らかした黒をずるり、ずるりと集めていた。 言刃を鳴らさず …言弾を響かせず 静かにゆるく編んだ髪へと溶けていく。 その黒もまた、存在の認識者もおりながら、 世界に拒まれ、顕れることが叶わなかった。 ────かの若き研究員は 意図したわけではなかったのだろう。 ただ、改訂の中で存在を葬られた〝彼〟と 紛失したとされる数頁の真実を知ろうとした。 だからこそ、この手は 彼ら到達不能の領域へ至った。 ]
(86) 2018/10/08(Mon) 06時頃