――……興醒めだ。一服してくる。
過去をとやかく言う奴は好かん。
[溜息混じりに言葉を落とし、漸く坊主から視線を外して。腰の鍵を取れば、背後にある鍵穴にそれを差込もうとしながら。
今、現在の事ならいざ知らず。過去をとやかく言われた所で、自分に一体どうしろと言うのかと。
過去がどうあれ、今は。少なくとも今この時は、自分の目にはお前さんしか映っていないというのに――楽しんでいるのは、お前さんとの触れ合いだというのに。この坊主はそれでもまだ、不満なのか。知りもせん奴と比べて、何が楽しいのだろうかと。
これだから餓鬼は面倒なんだ、と。興を削がれた事を内心で少しだけ残念に思いつつも、出した舌で唇を舐めて。
そこに仄かに残ったラムネの香りに舌を打ちそうになりながら、手にした鍵を、カチリと回した。]
(86) ねこんこん 2015/04/14(Tue) 21時半頃