パパぁ!
[宿屋の扉が勢いよく開いたかと思えば両手に荷物を抱えた女がふらふらと現れた。]
だぁめだ!もうどこもかしこも店じまい!
最後に行った店なんてもう全部!みぃんな!
売り切れ!あっははは!
[ハスキーボイスを響かせて笑うと、両手の荷物を部屋の隅にどさどさと下ろし、腰に手を当ててあたりをぐるりと見回す。
見知った顔がふたつ、みっつ…う〜ん、大盛況!これが皆お客様だったならどれだけ良かったか。残念な現実に唇を突き出して頭をもたげる。]
まったく。勝手口まで塞がれちゃってるんだもん、一周させられちゃったよぉ。あーやだやだ。辛気臭いったら。
[床に下ろした備品や食料を決まった場所に、テキパキと片付けて回りながら、誰にともなく話し続ける。いかにも勝手知ったる…という手際の良さだが、積み上げられた備品はその列をぐらぐらと乱していた。]
(86) 2018/07/23(Mon) 01時頃