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[ 冷たい風が吹く外はすっかり冬の顔を見せて。吐いた息が白くなるんじゃないか、なんて。
寒いなあ、とコートのポケットにつっこんだ両手は、指先が冷たい。首をすくめ、歩いていけば、気づいたときには彼が隣にいなくて。思わず驚いて顔を上げれば、その速度は緩まる。
考え事をすると歩みが遅れるのはよくないよな、と言い聞かせつつ。彼の目線が手元に伸びていることに気づけば、ポケットの中の手のひらを数度握ったり開いたりを繰り返してから、出した。]
暗いし。はぐれたらよくないから。
[ なんて、口実をつけてその指先に触れるのだ。]
サイリウムバンドつけてさ、森を
歩くなんて、SF映画みたいだよね。
[とくだらないことを挟むのは、ほんのすこし照れくさかったから。]
(86) 2015/11/28(Sat) 22時半頃