―屋敷から離れ・再び蹂躙されるこの街で―
[男は、空を見上げている>>81。
光と化した無数の命を、無限に飲み込む天を仰ぐ。
周囲は一面赤い花。アスファルトに散る、砕けた人と未来の残骸。
屋敷を遠く背にしたまま、一面に広がる光景が、壁に描かれた絵を想起させる。
そうだ。男はあの絵を見ていた。あれは、屋敷を出る>>77直前のこと。
虚ろな視界が、抜け殻となった暁が散らばる2階の一室に向けられて。
そこには、壁に描かれた赤い絵が>>6:95>>6:101>>6:104。
男には、それが何を描いたものなのかまでは、分からなかった。
まして、平穏な時に約束した>>1:-38、コーネリアが描いた『白血球』の絵>>7:*28などとは。
ただ、悲しいモチーフだとは、感じたはずだ。
救いの断たれた、先のない、男にとっては絶望を暗示させる未来図。
死体の折り重なるこの街の風景が、かつて見た赤一色で築かれた世界と同化して。
慈悲を求めた哀願の瞳が、感情の炎に焼かれて崩れ。
男は、天のさらに奥へと向かって、怒声を放ったのだった]
(84) ginlime 2011/12/15(Thu) 21時頃