―回想・5月2日午前、住宅街―
>>74
[金は家にありそうだというトレイルにため息をつき、]
主の金にまで手つけるほど落ちぶれちゃいないつもりだよ。
…まあ、食料には手つけちまったけどね…
[家族のことを訊ねられると]
…さあね。
仕送りは届いてるようだから、生きてはいるんだろうけど…
帰る家なんて、ないよ…
[奉公に出るとはそういうこと。十で家を出たときから、一生帰らない覚悟はできている。
互いに字が書けないために、手紙のやり取りも出来ない。今の主人なら電話をかけることくらいは許可してくれただろうが、生家には電話もない。あったとしても下手に話せば、帰りたいと思ってしまうに違いない。連絡はとらないと決めている。
気休めにしかならない額の仕送りが届くかどうか、それだけが家族の安否を確認する唯一の手段だった。]
(84) 2013/07/24(Wed) 13時半頃