御機嫌よう、────そうですわね。
この、不愉快な資料くらいですわ。
世には残酷な事を為さる方がいらっしゃるものですわね。
[そう言って、手にしていた資料を相手に差し出してみせる。
出来れば、そのまま相手に渡してしまうつもりだった。
ここは扉からどれくらい離れていたのだろう。
知らぬうちにかなり奥に入っていたか]
……あの、恐れ入りますが、宜しければお名前を教えていただけませんこと?
私は────先ほど、申し上げました。
火浦櫻子と申します。
お名前を存じておきませんと、お呼びするのに不便ですから。
[そして小首を傾げながら異人の男を見上げて問いを向ける。
青い顔。然しそれでも尚強気な光はその瞳からは喪われてはいない。
──しかし、か弱い弱者の仮面を忘れる程度には、矢張り資料に衝撃を受けたままではあった]
(84) 2016/02/24(Wed) 07時半頃