―小紬庵―
トントン カラリ
トン カラリ……
[機の音は突然のノックに消え、ほどなく女が現れた。その身にはいつものように火のような赤さの衣が纏われており、心を侵すような媚香もそのまま]
はい、こんにちは。 なんだかこの所、訪ねてくる人が多いですね…
[リンダがこの家や洞窟のことについて聞けば、答える]
ここは小紬庵…
「布を織る小さな家」とでもいったところです。もともとは私も、ずっと海の向こうに住んでいたんですが、大分前に母が亡くなりましたから… 母の遺言を頼りに、会ったことのない腹違いの兄に会うためここまで来てそのまま住んでいる、というわけです。
[部屋の壁には、独特のセンスで織られたと思われるタペストリーがいくつもかかっている]
これで生計を立てているんですよ… ところで、そうそう…洞窟でしたね。
[声の調子が、怪談を語るように一段低くなった]
…ありますよ。あなたの言う地獄か極楽のそれかは知りませんが、この近くに洞窟がね。つい昨日もあなたのように調べに来た旅の人がいましたね。私は中に入ったことはありませんが…学校を休んでまで探しに行くのは感心できないですね。
(83) 2011/10/10(Mon) 10時頃