―回想・5月5日14時過ぎ、総合病院の一室―
>>72
ズルいって、何……、ンッ、
[触れる唇は自分のそれよりは幾分かひんやりと、熱の篭った身体に心地よかったけれど、幾度も重ね合う内に同じ体温へと染まった。
奇妙な感覚だった。幼い頃から近すぎて、だからこそこんな風に触れる日が来るとは思ってもみなかった――なのに、しっくりと馴染むのが不思議だ]
…ッ、ん…、…チア、キ…
[頭の芯が痺れたように霞むのは熱のせいだけじゃないと、知っている。
暖かな吐息と共に唇へと触れる囁きは、身の内に甘い熱を孕ませて、伏せた瞼が切なげに震えた。
顔を傾け角度を変えての口付けは、繰り返す程に物足りずに、肩から首へと腕を滑らせ強請るように引き寄せてはまた啄む]
…………ズルいのは、どっちだ、よ、
[怪我をしているからとか、病院だからとか、断る理由は幾らでも思いつくのに、見上げる蕩けた視線に全て霧散した。
本当に…狡いのはお前の方だと心の中で独り言ち、再び顔を寄せて唇のあわいへと舌先を這わせ、背を抱いた右腕に力を込めて彼の身体ごとシーツの海へと身体を沈めた]
(82) 2013/07/30(Tue) 23時半頃