[隣の店番見習いが困惑する様子に、顔を上げた。]
お客さん、何か探してるの?
悪いけど、お探しの品はないんじゃあないかなあ。
ご覧のとおり、こういう……小さい店だから。
[両腕広げ、猫の額ほどの店内を示してみせた。
商業区と居住区の境の路地裏で、看板も出していない骨董店である。にもかかわらず、時折こうして通り掛かりの客が誤って入ってくる。
出て行く親子連れをにこにこ見送ったあとで、再び銀器を磨く作業に戻った。顔を上げぬまま]
うちはワケありの品をワケありの対価で扱う店。
ああいう日向の匂いのする人向きじゃないからね。
……それより。
[手を止め、銀器をカウンターに置く。あれからいくつかのことが分かった。彼が本当に銃に宿る何者かであるのだということ。詳しい正体については尋ねても要領を得ないこと。以前はリツと呼ばれていたこと。それから――]
(81) 2015/06/08(Mon) 01時半頃