――――俺達の街を、これ以上!!
[耐えられなかった。
ウイルスに虐殺された者たちが、新たに蹂躙されていく姿に。
耐えられなかった。
救いだとは分かっていても、全てが一掃されてゆく喪失に。
けれど、男の叫びはいつだって空しいもの。
目の前にいた、街人だった者達が、粉みじんとなり赤く散る。
男と熊を素通りし、一路この道を突き進む、勇猛なる兵士達。
そんな彼らの1人から、すれ違い際に傍受した通信]
『こちらβ! 意思保有型と接触。戦闘を開始する!』
[きっと、男のようにウイルスに半端な耐性を持つ者が、他にも存在していたのだろう。
『意思保有型』そうか、己はかつてそう呼ばれる存在だったのか。
リンダの父が知っているなら、その存在は、当然彼らも知っているはず。
対策も、知っている。壁を作ったものならば。
おそらく、白いプロテクターで完全防備を固めているのも、感染者の返り血を明確に視認するため――――]
(80) ginlime 2011/12/14(Wed) 21時半頃