─回想・5月6日 夜 マドカの家─
[兄に食事と薬を与えた後、そのまま居眠りをしていたマドカは、目が覚めると自分の足元にノートが落ちていることに気づいた。真新しい大学ノートだ。表紙には何も書かれていない。床にはこんなものは落ちていなかったはずだ。置けるとすると兄しかいないはずだ。兄を見る。兄はマドカに背を向けた状態で部屋の奥で横になっていた。眠っているのだろうか。]
読むね…。
[聞いているか、わからないが一言断りを入れ、ノートを開く。パラパラとめくると、兄が感染してからの容態が詳細に記載されているようだった。最初のページにはこのノートを発見した場合は、人狼病に苦しむ人の為に使って欲しいという旨と、妹を助けて欲しいと、遺書と同じ文面が記載されていた。ノートの記述はマドカが兄を発見する前日5月3日でぱったりと途絶えていた。兄を発見してから、全くコミュニケーションが取れていなかった為、兄がもう理性を手放し、会話もできない状態なのだと思っていたが…。マドカは兄が意図して自分とコミュニケーションを取らないようにしているように感じた。まだ理由はわからないが…。]
(80) 2013/08/02(Fri) 00時頃