―5月5日早朝、チアキ宅前―
>>67>>68
[柔らかな髪に指先を埋めて幾度も撫でた。幼い頃には共に転げまわって触れあう事も多かったけれど、成長するにつれ当たり前のようにその機会は減った。
それでもナユタが落ち込んでいる時には慰めるように頭を撫でたその手に、どれほどの安らぎを与えられていた事か。
素直になれずに差し伸べられた好意をを振り払ってばかりの自分に、困った表情を浮かべながらも、チアキは決して怒る事はなかったように思う。だから甘えてばかりいた。
記憶ごと感触を愛おしむように抱き締める。彼の心が少しでも軽くなればいい、と願って]
……うん
…………チアキは…悪くねぇ、だから大丈夫、
[ロケットの中笑顔を浮かべる二人を想った。チアキはあの時どんな気持ちで自分に写真を見せたのだろうと考えると、やるせなさに胸が詰まる。
仕方なかった、なんて言葉が慰めにはならない事を、両親の死を悔やむナユタはよく知っていたけれど、それでも彼に罪はないのだと、それだけは告げたくて言葉を紡ぐ。
途切れがちな小さな声が耳の傍で響く度、ゆっくりで構わないからと背へと回した片手で穏やかなリズムを刻んだ]
(79) 2013/07/28(Sun) 19時頃