[彼女が相対する男に対して、罵り言葉を並べ立てている>>76声はしっかり聞こえていた。女性がそのような言葉を並べるものではない。……それもまた、彼の行動を引き起こす一つでもあったのだが。
だからこそ、それこそまさしく流れるような動きで。
細く華奢なその喉元に、ペン先を突き立て肉を屠る。…少し力を込めて押し込んでしまえば、気管支など容易に届くだろう。]
最期くらい静かにはできないのかね?…全く、本当に醜いものだ……醜く、そして穢らしい。
嗚呼、穢らしい、穢らわしい…。……女性であるというだけで、こんなにも美しいというのに。
[無表情なまま、口だけを動かす。…迸るその赤に服が汚れてしまわぬように、彼女の背に回ろうとしただろう。…いや、もう遅かったか?
ずぶり、ずくりとペン先を沈めながら 肩越しにこちらを見遣る彼女の瞳が 自らのと重なる。…菫色の瞳は、濁っていなければ使えたのに。]
……人殺し?…嫌ですね、私はただ────
(79) 2016/02/26(Fri) 05時半頃