―午前/『森の真珠』客室付近―
[部屋に運ばれベッドに降ろされると、白い女の子が佇んでいるのが見えた。まるで、森真珠がそのまま人になったような。だれだ――そう言いかけたところで、トニーは自分の顔が勝手に笑みを浮かべている錯覚をおぼえ慌てたように口を塞ぐ。
この人…この人か。夜があけてからずっと黙っていたノレッジが、リッキィの姿を借りたまま楽しそうに笑っているのが目に浮かぶ。奇跡の子カリュクス、そしてヴェス…奇しくも「美味そう」と評されていた二人が、今目の前に並んでいた。]
ベスにーちゃん!また外だして!!
[そう叫ぶも、まわりに3人しかいないのを見てすかさずベッドの桟に頭突きした。ケガが増えた。鈍い痛みが広がる。右肩を力いっぱい掴んだ。おれのからだでみんなにさわんな!!!
しばらく前屈みにうずくまった後、肩で息をしながら顔を上げた。額にうっすら血が滲んでいる。]
…はー、ビックリさせちゃったなァ。ゴメン。
こんなんで夜からずっとボロンチョでさ。
おれ治すためにきてくれたのか?
えーと…かゅ、カリュー……?
[ヘラリと笑うそれは、トニー少年そのものだった。]
(78) 2017/08/21(Mon) 01時半頃