―――……、
[揺れた瞳を見逃さず、ぢゅ、と濁った音色を立てて指を啜った。
指腹でエナメル質を辿られれば、人であるはずの身が疼く。
彼が血に飢えるように、己は彼に飢える。
ここ数日で作り変えられてしまった肉体は吸血種に転じるよりも、自身にとっては余程性質の悪いものだった。
唇から零れる指と繋がる銀糸を舌を閃かせて断ち切り、今度は流石に大人しく脱がされた。>>59
褐色の肌は陰影を濃く浮き上がらせる。
彫像を思わせる肉体が、カソックを纏う姿は想像し難いだろうか。
残った眼鏡を外して、小棚に預けると視界が歪む。
ぼんやりと滲んだ視界は、相手の視線を捕らえても、元々鋭い瞳を細めて凝視を返すばかり。]
トレイル、見えない。
もっと、傍へ。
[近視を患う身が濡れたタイルを踏んで、共にシャワーを浴びる。
伝う湯筋がお互いの身体に移りあい、経由するほど近く。
触れ合うと言うより、殆ど抱き合う形。]
(77) momoten 2014/02/09(Sun) 01時頃