―回想・14歳秋―
[ルーカス兄さんの前で号泣したあの日以来、大好きな兄さんの『大好き』が、もっと別の何かへと変わっていった。
もっと話したい、触れたい、……離れたくない。
柔らかな好意の裏に巣食う凶暴な欲求に、けれどあの時はまだ、名前をつけかねていたんだ。]
[小学校の頃は頻繁に行き来をしていた自分たちだが、それも年を重ねる毎に減っていき。
結局彼の大学受験を理由にピタリと止むこととなった。
そうして、彼の受験が終わる頃。ニコラスもらまた、中学生となっていた。]
[一度途絶えた交流を元に戻すには、機会が掴めず。
そんな時に母のふとした発言が思わぬチャンスとなった
『そういえばニコラス、数学のテスト悪かったでしょう
ルーカス君に家庭教師してもらったらいいんじゃない?』
――なるほど。その手があったか。
昔もよく宿題を手伝ってもらっていた。
褒められたくて、こっそり自習もしてたっけ。
ともかく、家庭教師ならば正当な理由で兄さんに会える。
……そうして俺は次の中間テストで人生初の赤点を取った。
それも、全教科で。]
(77) 2015/11/28(Sat) 21時頃