―回想・5月1日午後8時過ぎ、繁華街の寂れた酒場―
>>64
……あんたさぁ…――、
[紡ぐ言葉を途切れさせるように届けられたエールのジョッキへと視線を落とす。それで忘れられるのかだなんて、馬鹿げた問い掛けは発す事なく揺れる琥珀をただ見詰めた。
――踏み込みすぎてはいけないと心の何処かで警鐘が鳴る。それでも踏み込みたいと思う心が過去から来る物なのか、今ここにある物なのか、判別がつかずにまたジョッキを煽り]
…………あんたも底意地が悪ぃよな…
けど…殺さなきゃなんねぇってなったら…俺も多分、死にたくなる
[酩酊し揺れる思考の中思い浮かぶのは当たり前のようにチアキの笑顔。
考えた事がなかった訳じゃない。むしろ幾度も幾度もその場面を想像した――けれど何度繰り返しても結論は出ない。ただ、その時を想えば胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになって…生きてはいけないのではないかと、ただそう思うばかりだ]
(77) 2013/07/24(Wed) 03時半頃