―昨日・浴場―
[首筋に予想していた牙―モノ―は訪れず、代わりに齎された甘い痛みにぴくりと肩が揺れた。>>54]
……っ……ん……
[鼻にかかったような声が、浴場の性質状思いのほか響き、耳に朱が上る。
それを隠すようにはぐらかすような答を、行動を返して拘束を抜け出す。
数歩歩いたところ、脱衣所の扉で振り返れば驚きに目を見開き立ち尽くす男が一人。>>66
誤魔化せたようでほっとしつつ、そう言えば、と伝言を告げる。]
シュウルゥから。
手を抜きおって……だって。
数発殴るよう言われたけれど、個人的にはまあ、あんな状態でも生きていてくれて嬉しいから殴らないでおくね。
もし彼が戻ってきたら、殴られる覚悟はしておいた方がいいよ。
[それだけを告げるとヒラリと手を振って、脱衣所から廊下へ、彼の目が届かない場所へと逃げ出した。廊下を歩きながら、真っ赤に染まった顔を隠すように、口元を手で覆う。*]
(76) 2014/02/07(Fri) 22時頃