[ ───学者の目に留まったのは、一つの指環。
赤い、薔薇の蕾。両脇に飾られた小振りな宝石。
宝石は、恐らくはジルコニアだろうけれど、中央の蕾は仕立て良く丁寧に包まれて見えた。
学者にとっては、小指サイズの小さな指環、聖女の指には本の少し大きいだろうか。──否、もしかしたら丁度良いかもしれない。学者が思う以上に、聖女は成長しているから。
赤い薔薇、──情熱の赤。然し咲き誇る前の蕾には、"純潔"の意味がある。
聖女オーレリアはエニシダの象徴だけれど、咲き誇る前の純潔の聖女たる"私の"オーレリアには、赤薔薇の蕾が良く似合う。
聖女が手に取っていたものを当てる、とかその目的は消え去っていて─結果的に当たっているのだけれど─学者は其の指環を手に取った。
青年が髪飾りを買うに合わせて、隠れるようにしてプレゼント包装。]
(74) 2015/09/24(Thu) 21時頃