─回想/5月2日 午前 住宅街─
>>55
…真面目に働いての、かい。そりゃァ──心許ねーだろうな。色々と。金だけならその家にありそうなモンだが…でもねえ?
[ふと、強気に僅かな緩みが見えたような、彼女の表情を眺めて。──らしくないと、自身で胸中呟きながらも、また少し黙した唇を開き]
…家族はどうした。帰んねーの?家に。
[帰れる家が、この時勢でまだあるとすれば。──そうだ、少女は2年前のあの日、それでも彼女自身の身よりもなお家族を案じていた。それを訊くのは、深入りのし過ぎだったかもしれないけれど。己には言えない台詞を当たり前のように返した彼女に、どこか眩しい陽の光を感じたあの日の感覚が、強い印象になっていたのか。
あしらいに動かした眉を、ふと、継がれた言葉に緩と片方寄せ。僅かに顎を思案するよう傾けてから、表情を戻し]
──額にもよる…ってな。
…、再会の縁と、黙っとかせる礼だ、……割り引いといてやるよ。あと、さん付けは止めろ、…妙にすわりが悪ィ。
(74) 2013/07/24(Wed) 03時頃