ええ、差し上げますわ。
ですから、そこから出てきて下さいまし。
けれど、見ての通り私の手は後ろで戒められておりますから、どうにか貴女様が外してくださいませ。
端を引けば、解けますから。
[悠然と笑みを浮かべ、相手に背を向け膝を着く。
互いに手を戒められていれば、此方が立ったままでは上手くはいかぬだろう。
相手がリボンを引いたならシュルリと解け、結われていた黒髪は僅かな結び癖を残してはらりと他の髪に混じり流れていく。
そして相手がそのリボンを不恰好に身に付ける様を見ては優しげな笑みを浮かべながら肚の底では嗤うのだ。
────似合いもしないのに愚かなこと]
この戒めが解けましたら、御髪を梳いてあげられますのに。
────あゝでも、櫛も無いのかしら。
[相手の横に立ち、共に広場に立つことになるのだろう。
そう、何かしらが起こるまでは]**
(74) 2016/02/23(Tue) 10時頃