【人】 座敷守 亀吉

[ 仇の舌だ。噛み切ってやれば必ず隙は生まれる。
なのに亀吉の舌は、生温くて濡れた、気持ち悪い舌に絡みついていた。相手の柔らかい肉が触れるのが気持ちいい。行き場を失った手は直円の肩に置かれた。息もできないほどの激しいキスに頭がぼーっとしていく。濃紫の瞳から鋭い眼光が消えていき、ぼんやりとどこか遠くを見ているようになった。
先程精を射出したばかりのそこが、その先にあるものを欲して熱を持ち始めた。ラルフと直円によって教えられたことに対して身体は素直だった。]


けほっ！ はあっ……！ はっ、…はっ……


[ 始まりが突然なら終わりも突然だった。軽く咳き込みながら空気を求める。全身に残る倦怠感が更にひどくなったようだ。
ふらりと壁際にいった。言われた通り続きをしようとして。
冷たい壁に手が触れて、目が覚めた。

──今、何をしようとした？
──さっき、直円に応えなかったか？

ゾッとする。]

(73) ひひる 2016/06/19(Sun) 22時頃