[背中を彼にあずけながら、あいまいになるふたり分の体温に目を細め。彼の手を取れば、ちいさな指をゆるりと絡めます]
――わたしね、ずっと寂しかったんです。
おとうさんも、おかあさんも居なくって。お友達も、中々出来なくって。
[虹色を瞼に閉じこめ、ましろいまつげを震わせて。
ぽつり、と。落とす言葉は、まるで贖罪のように。
大切なお友達とも、おとうさんのように思える人とも、出会えましたけれど。
こころの何処かで渦まいた闇は、それでもはらされることは無く。
――けれど、"人間"とだって手が取り合えると証明された今ならば。
この闇を閉じこめて、分けへだてなく絆を手をつなごうと、そう思える気がするんです]
……でも、もう大丈夫。
ねえ、アルゼルド。あなたはどう?
寂しく、ありませんか?
[強がりな狼さんの手を強く握って、そう尋ねてみせたら。
彼は一体、どんな返事をしたでしょうか]
(72) 製菓 2015/01/17(Sat) 09時半頃