―― 穀倉地帯[漁村を離れ、ちょっとした木々の間を抜けたなら程なく眼前に枯れた穀倉の海が姿を現した。右手に黒く聳える死火山とやらは、高い場所から静かに僕等を見下ろしている。吹く風から潮の匂いが消え去って、草原を抜けた乾いた砂塵が、鼻の奥にこびりついた。通信で雑談でもしながら湖へ向かおうと思っていたけど、音を聴く、というバーナの邪魔をしちゃいけないと思って僕は彼からしばらく距離を取り、紅い帽子の背中を追ったんだ。彼が僕のものではない足音を聞きつけたら僕が目になるという約束を全うするために見晴らしの良い枯れ草の海原で、両目を見開いた*]
(71) 2015/03/08(Sun) 22時頃