―回想・3年半前のこと―
[実績のある指導者は、速水春風の力をぐんぐんと伸ばした。力が伸びれば、トレーニングは楽しい。
次は社会人に交じってのレースにチャレンジしてみようか、そんな話も出ていた。
ブレザーに短めのスカートで、走って帰ると、トレーニングウェアに着替えて飛び出す。]
『春風ちゃん、今日もこれからランニングかい?気をつけるんだよ?』
はい。ありがとうございます。行ってきます!
[寮の玄関脇でお茶を飲んでいた寮母さんに挨拶を返し、ランニングに出る。
いつものルート、全体で10kmくらい。
所謂ジョギングコースまでに、1箇所だけ大通りを渡る。
その日はたまたま赤信号で、信号待ちをしながらも身体を動かしていた。
刹那、近くでガシャンという音が聞こえた。
パッと音のした方向に目を向けた瞬間、何か鉄の塊が足下に滑り込んできて、自分の足を払うように通り抜けた。
空が見えて、地面に叩きつけられた瞬間までは覚えている。
(71) 2017/09/17(Sun) 10時頃