―5月5日14時過ぎ、町役場前広場付近―
[虚ろな目と、覚束ない足取りで。昨日人一人を殺したことの罪の意識と、今日何も出来なかった無力感が渦巻く心を引きずって、彼女はその場を訪れ、町会便りの号外を受け取る。
「ラルフ」。穏やかな物腰で(>>0:138)?昨日、私を心配してくれた(>>2:93)者の名前だが……彼が、反乱組織の構成員?
イメージと、その情報は全く結びつかない。ありふれた名前ではある。恐らく、別の人なんだろう。
ほんの少し、安堵している自分に気づいてしまう。……自分にそんな資格など、無いのに。
それでもなお。今日の処刑対象が決まっていて、処刑されるだけの理由が有る人だと。それに今日私は、マドカやマリーやチアキを守るために、何かをする必要はないということだ。]
……そう。
[本当に僅かにだけ、心に余裕ができた。明日の事を少し考えようと思える程度には。そのことに気づき、自分の残酷さにも気づいてしまうが……そもそも、自分はその事を知っていた。今更、自分の残酷さには驚かない。
ラルフ・ブロムベルグが、かつて会った掃除夫のラルフであることを、彼女はまだ知らない]
(70) 2013/07/28(Sun) 09時半頃