ー回想:郷愁の車窓ー
[ 古城へ向けて揺れる汽車の中、送り主の伯爵夫人についての記事が載っている雑誌を買っていたのを思い出した。>>44
表紙の特集から思わず手に取った、略してフォーサイと呼ばれるその雑誌を読むのは初めてだ。だから評判や信憑性についても、その記事がまったくの絵空事であるとも知らなかった。]
これ・・・本当なのかしら?
(ーーーー読み物としては面白い。
事実は小説より奇なり。絵画よりはーーーー)
[ まさか公爵夫人と先祖の関係まで書かれているとは思わなかった。無意識に触れた指輪の鎖が音を立てる。
その仕草はここ数年で身についた癖だった。
さすがに根拠も出所も不明の記事を丸々信じ込むわけにはいかず、自然と残る記事についても疑問は残るもののーー頁の隅にリッカ・ヘンダーソンの名が記されていたならば、頭に入れて置くことにした。
車窓からは、風光明媚な山々。
古くから観光保養地として知られているものの、オーレリアがそこを訪れるのは初めてだった。
それなのに、涙が一筋零れ落ちた。]*
(70) 2016/07/27(Wed) 09時頃