[ そうでは無かったのは、初めて会ったあの日だけ。>>61
男は基本いつも飄々と笑っていたから湿っぽい話をしたことは少ない
―――嘗て共に旅をした師が"笑顔でいれば必ず道は開ける"と言っていたから
…が、隣に座った彼の暖かさに触れたからだろうか
酒の力も手伝って気付けば彼相手に愚痴っていた
"どうして俺を置いていってしまったの"
師はネペンテスの秘宝を探しに出かけ、帰ってこなかった。
人の命はかくも脆いものだと神を呪い唖然とするしかなかった。師はもう居ないという実感はなく、だからこそ受け入れられない。
師には一度も勝てたことが無い
…だから師の成せなかった唯一の事を達成することで
初めて乗り越えられる気がしたのだ
その時"ネペンテスの首飾りを手に入れたい"
と彼に話したことは、果たして記憶に残っているかどうか。]
(69) 2017/09/04(Mon) 14時半頃