ー 回想:貧民街の迷子の話 ー
はなしをきいてくれてありがとう
アイリーンおねえさん、またね!
[ 手紙や指輪を連れて行きたい、という女探偵への
依頼は、謎を残して未解決のまま“保留”となりました。少女が依頼料のつもりで持ってきた当時の全財産は、
結局手元に戻ってきてしまい、ポーチへと。
いつか謎が解決したら、彼女と一緒にご飯を食べようなんて呑気に考え、地図を見ながら行きの記憶を頼りに歩きました。
ところで少女は地図を見るのは初めてでした。
汽車に乗って駅からは、道行く人に尋ねながら女探偵の元にたどり着いたのです。
当然帰りもそのつもりでした。しかしなかなか人に会えず、気づけば見覚えのない景色。
そこが貧民街であるとは、まったく知りませんでした
どこで道を間違えたのか、今来た道はどこだったのかまったくわかりません。
見たこともない世界が、なんだか怖くなってしまいました。指輪を固く握り締めながらキョロキョロと周囲を
見ますが、見れば見るほど、出られない気がしたのです。]
(69) 2016/07/29(Fri) 22時頃