[胸に触れる仕草に、思わず自分も真似してしまった。
傷跡、普段はあまり意識したことはないけれど――
さっき貰ったカードの絵柄が、ふと連想させられた]
へえ、君異国の人でしょ。
わざわざ先生に治してもらいに来たりしたの?
[自分が受けた手術のことや、主治医がどれほど高名であるか。
あまりよくわかっていなくて、ただ関心したような呟きは零れる。
けれど、向けられた言葉と曖昧な笑みに、表情は少しばかり曇った。何せその笑顔が何を意味するかわからない。馬鹿にされたのかと想像すれば、切なくもなる。気まずそうに横を向いた頬は、ほんのりと朱がのって]
忘れ物、というか。つまり、
荷物が重いから悪いんだよ……ホテルとか、遠いのかな。
[ことさら重たげに持ち直して見せながら、ゲートの先を見やった]
(69) 2011/06/14(Tue) 02時頃