[中古品は訳あって破格の値段であると云う。
消し去りきれない記憶の欠片と、生得的な視力の悪さがその理由であると少年自身が知る由はなく。
人懐っこくおしゃべりもする、愛玩用に誂え向きの人形は
いささか不相応の安価で目に付く入口付近に鎮座していた。
窓際の席にはレース越しの日が射し込んであたたかい。
目隠し越しに陽の光や夜の星月が見える訳では無いけれど、この特等席もしあわせな微睡みに手を貸していたかもしれない。
高さの合わない木椅子のせいで足はぷらりと浮いて
手は膝の上でお行儀の良い姿勢をとりつつ、うたた寝でもするように僅か傾いた頭は下を向いていた。
くせのある栗色の髪が、陽射しを受けて艶やかに輝く。
薄く開いた唇からは安らかな寝息でも聞こえそうだ。
身じろぎひとつない静寂と目隠しの存在を除けば
作りものとは思えない、ただの少年なのだけど。]*
(69) 2017/10/05(Thu) 16時半頃