[ 北の遠くの地まで、冬の色を追い掛ける。
いつもだったら一晩でどこにでも着いてしまうのに、
今回ばかりはびっくりするくらい、遠いみたい。>>30
寒くなるからと暖かいコートを買ってくれて、
似合うかしら、とくるんとその場で一回転してみたり。
袖を手の甲に掛けて、口を隠して上目遣いしてみたり。
食べたくなったら揺り籠の中で食べて良いと言われたけど、
彼に飛ぶのをやめてもらって、二人でご飯を食べた。
一緒に同じ物を食べていたかったし、
わたしがご飯を食べている時の顔を見ていたかったし、
食べきれなかったご飯を口を開けて待っているんだもの。
北に向かうにつれて、町も段々となくなっていって、
宿に泊まらずに彼の暖かな羽毛の中で寝るようになった。
とくとく。とくとく。
彼の命の音を聞いていると、すぐに眠くなってしまう。
眠るのが勿体ないと思うのに、また意識が、ふわり、ふわり。* ]
(68) 鯖 2015/10/18(Sun) 02時頃