[ 食堂から一歩踏み出すまさにその瞬間、手を引かれて逃避は失敗する。>>60
勿論相手はわかっている。しかし振り返れば、予想していた無表情とはまったく別の色を浮かべたセシルがそこにいた。
何故彼がそんな悲しい顔を向けるのか、オーレリアにはわからない。]
・・・ごめんなさい
あなたにそんな顔をさせたいわけじゃなかったの
[ オーレリアは、応接室のやり取りだけで
彼に対し警告色を浮かべ、勝手に怯えていた事を心から反省した。それがどんな結果になるかはさておき。]
おやすみなさい、セシルさん
良い夢を
[ 伺いに行く、と宣言されたことに違和感はある。
しかし突き放すこともできない。突き放せる理由も何もオーレリアは持ち合わせていないのだ。
頭を下げて、用意された自室に戻る。
寂しくて不安で仕方がなかった時、自分もあんな顔を浮かべていたのかもしれない。
あの時の少年は、そんな自分に手を差し伸べてくれた。勿論その少年とピアニストが重なる筈もなかった>>59]
(67) 2016/07/29(Fri) 22時頃