[僕の移ったコンビニは、丁度縛り付けられていたガードレールの真向かいだ。
屋根の上から、いつもいた道路脇を見下ろす生活。
ガードレールがなくなって、供えられる花もなくなって。
ただ行く人を見ているだけの生活に、雷が落ちた。
ガードレールがあったはずの場所。手を繋いだ男女が立っていた。
知らない男。だけれど、女のほうは間違えもしない。
眩しいほどの金髪。あのツンとした雰囲気はだいぶ丸くなって、ふっくらとしていたけれど、それでも見間違えるはずがない。]
『ごめんね、のん。私ずっとね、のんのこと忘れられなかった。あの日、あれからすぐにまさか一生会えなくなるなんて思ってもみなかった。なんて馬鹿なんだって、何百回も思ったけど。
――だけどね、私、結婚するの。だから、安心して、天国へ』
[もうその先は聞こえなかった。
眼の前が真っ暗になるような気がして、道路に向かって声をかける女の背中を真っ直ぐに見られなくて、叫びだしたくても声は出なくて、隣の男を呪おうとすら思って、それでもあいつの今の笑顔をこの男が守っているかと思ったらそんな事すら望めなくて、あいつが声をかけている先に今僕はいなくて、]
(67) 2012/03/13(Tue) 23時半頃