[まさか愛馬を走り続けさせる訳にもいかず、時折休みを取りながら白軍へ近づいて行く。
出来るだけ人にかち合わぬよう移動するのは中々に神経を使うようで、じわじわと溜まる疲労に溜息を吐いた。
尤も人は避けられても魔法等は幾つか踏み抜いている可能性があるが。]
−−どうか生きていてください。
[最後に来た手紙の、最後に添えられた一文。
馬を進めながら思い出し、なんとも言えない表情で目を細めた。
吹雪の日に会った彼女が顔も知らぬ文通相手であると気付くいたのはいつだったか。そう時間はかからなかった気がする。
二つに結った髪と花に傘を差し出す横顔と、白い花に変えられた手紙を思い出して口をついたのは。]
…“あなたの死を望みます”
[希望と慰め、更に幾つかの言葉を持つ雪の雫と名付けられた花は、人に贈るとなると意味が変わった。それはもう、戦場に立つ敵に贈るにはぴったりで。
故意では無く、あの日、共通の記憶にある花が偶然そういう意味を持っていただけだと、信じたいが。]
(66) 2014/07/15(Tue) 23時半頃