――……ッ、
[何処かまだ沈んだような雰囲気で部屋へと向かおうとする彼の後に続こうとすれば、その足取りの覚束なさに思わず彼の方へと手を伸ばしてしまい。
半ば反射的に、支えようと掴んだ彼の腕は――彼が複雑な顔をすれば、すぐに離しただろうけれど。
しかし万一、そうでないなら。
掴んでおいて勝手にすぐに離すのは心証が悪いだろうから、部屋まではそのままで……いさせて、貰おうと。]
いや、適当に大部屋で寝ようと思っていたからむしろ……助かった。
何だか気を使わせてしまったようで悪、……じゃあ、なくて。…ありがとう。
………、実は俺も昨日は、あまり眠れなくて。
次の日が楽しみで眠れないのなんて、…子供の頃の遠足以来だったよ。
[彼の唇に触れる白い指を視界の端で捉えながら、ゆらりと一度視線を揺らして、ついつい出かかった謝罪はぐっと飲み込んで、代わりに礼の言葉を向ける。
ついでに、少しだけ言い辛そうに暴露をひとつ。実際昨日は、緊張のあまり殆ど寝られやしなかったんだ。]
(65) 2015/11/20(Fri) 12時半頃