[父の仕事の関係で、十代のころこの小さな国へとやってきた。
花屋になるのが夢だった自分は、何処にいても植物図鑑を持ち歩き、素敵な庭を見つけては花の種類と庭の構成をメモして歩いていた。
そんな自分が、
この古城の庭を見つけるのは時間の問題で。
石塀に囲まれた中、庭を覗けるのは正門の鉄柵越し。
何とか中に入れないかとうろうろしていたら、優しそうなおじ様が中に入れてくれた気がする。
通された庭は、まるで秘密の花園みたいで。何て素敵なんだろう!って胸をときめかせた。
ただ、あまり手入れが行き届いてないように思ったのが残念で。だから、もったいないなって思わず呟いてしまったんだと思う。]
「私もそう思うわ」
[背後から掛けられた声に飛び上がりながら、
慌てて振り向けばそこには。
初めて、花より綺麗だって思える女性が立っていた。]**
(65) 2016/07/27(Wed) 02時半頃