[すうと一つ息を大きく吸って、炎の灯った長い蝋燭を近づけ、息を吹く。途端、肌を焦がすような炎が宙に流れるように噴き上がった。
その炎は円を描いて回り、観客の頭上を照らしていく。本来なら肺活量の必要な大柄な男が行う芸。けれど目の前の小柄な童女は不思議なことに、遜色なく噴きだされる炎を操っていた。
続いて取りだされた何本もの松明を順繰りに頭上に投げ上げると、噴きつけられる炎が灯っていく。
炎を上げて燃え盛る松明をお手玉のようにたやすく操り、道行く人々の目を引きつけていく。
しばらくして松明を全て手に納め芸を一段落させると、人々の拍手が鳴り響いた。]
さあこの通り、世にも不思議な華月斎一座の手妻はまだまだこんなものじゃあ御座いませんよ。
炎とくれば続いては!こちらの爺……いや沼の翁が存分に水の芸を見せてくれましょう。
さあさあ、見逃せないよ、寄っといで!
(65) 2014/09/23(Tue) 21時半頃