ぎゅア、
[唾液の粘つく糸を引く余韻さえ貰えず、褐色の頬から離された唇から鳴る、潰した蛙の、汚物流出を予感させる濁った叫び。
翅を掴まれる>>56、即ち己の全体重が付け根への負担となる体制は肉袋の中身を激しく揺さぶり締め付けた。目の端が切れるかと思わせる程見開かれた瞳を血が奔る。]
……う、ぁ、血…ち…ちから…。
[チョコレート色の滑らかな肌に浮かぶ血の滴から漂う魔力の芳醇な香りは、歪んだ唇の両端からだらりだらりと血と泡混じりの唾液を溢れさせ。
悪魔に憑りつかれた人間、あるいは人間をやめた人間に似た覚束ない手つきで指に掴まり、耳まで裂ける、否裂けろ―その方が都合がよい―とばかりに開いた口で、傷口を覆う。]
フーッ、ふー、ぅ、うヴう゛…、……
[愛嬌も色香も幻の如く、今流れている時間とは別の次元に丸めて固めて放り投げたのか。欠片さえ残していない相貌は、まさしく飢えた悪魔、か。
紅い角膜から伸びた血線は白目を覆い尽くし、口は唇に力を籠め吸い上げる傍ら、舌を傷口に潜らせて更なる流出を促し続ける。
満ちる満ちる満ちる舌を焼き喉を転がり胃壁をくすぐる赤い血で全身が血管が細胞が歓喜の饗宴に湧いて―]
(64) 2015/08/01(Sat) 02時半頃