― 港 ―[まずは命のある荷物(人のことだ。この言い方をすると船長に殴られる)を下ろし、その次に積み荷を降ろした。メンテナンスに入る船大工たちと挨拶を交わし、あたたかくなった懐を叩く。週末の市に向け、街の騒めきは始まっている。それとも、いつもこうだったか?最後に来たのは、―――少なくともあと2枚は衣服を着ていた頃だったか。連続する季節は過ごさない。今年も、夏が終わる前には経つだろう。足を向けるは、宿ではなく時折人を雇って痛まないよう管理している、一応の持ち家。先祖から受け継いだ家に愛着はなく、けれど売るつもりもない。持ち上げることの出来る錨のひとつに向けた足は、まずは迷うように街中を泳ぐ**]
(64) 2019/07/26(Fri) 01時頃