[しばしの煙草タイムを味わっていると、物静かな朝の空気が少しずつざわつき始める、その気配。直接目にせずとも感じる、生徒たちが登校を始めている証だった。
携帯灰皿に煙草を揉み消して、さて、と息を吸い込んだ時、職員室からこちらに出てくる教員の姿に気付く。]
「南方先生か、おはよう。」
……おはようございます。団先生。
[挨拶を交わしたその相手は、俺から見てもだいぶ年上の保健体育教師。
山吹高校から来た彼とは夏休みに出会ったのが初めてだが、強面な顔に似合わず親身に相談に乗ってくれる面倒見のいい先生だった。
彼と入れ違いに職員室に戻ろうとしたが、呼び止められる。]
「浮かない顔をしてるな。今日から新学期だぞ?」
そう見えます?
……まあ、わくわくどきどきって歳じゃあないですからねえ。
「何か悩み事でも?」
そんなんじゃないですけど、いろいろ面倒じゃないですか。
今まで長いこといたのが男子校だったんで。女子生徒には気ィ使わなきゃいけないんだろうなあとかってね。
(64) 2014/10/14(Tue) 22時頃