手料理なんてそんな大層なものじゃあない、が。
………じゃあお腹が空いたら、一緒に食べよう。
[貴方の方へと近付きながら、提案にはこくりと小さく頷いてみせるも、ぐっと詰まる胸に思わず身体が強張った。
だって、"手料理が食べられるチャンス"、だなんて。
どうしてそんな、まるで楽しみにするような言葉を向けるのだろう――そんな言葉を向けられたら、錯覚してしまいそうになる。
貴方が俺の方を、見てくれたらと。
"そういう関係" になる事が出来たらと、何度も何度も願った、けれど決して叶わない夢をまた見てしまうじゃあないか。
そうして俺はまるで逃げるように視線を外して、貴方の分の握り飯を握る。
初めて食べるなら梅干しは辛いかもしれないと、代わりにもうひとつ見つけた鮭の身を詰め終われば、伺うように貴方の方を向いて。
礼と共にスープを受け取り、少し躊躇った後に今度は俺が貴方の裾を軽く一度だけ引いたなら、貰ったハンバーグとライスとそしてスープをトレイに乗せて食堂へと向かって行った。]*
(63) 2015/11/23(Mon) 15時半頃