―回想・あの夜について―
[ぼくが殺されなかったのはようするに、子供だったからだろう。目の前で親を殺された子供なんていうものは、哀れで、愚かで、無価値で、情けなくて。足元に転がるぼうっきれのように取るに足らない存在だ。
父の仇は。ハンターの息子だというだけの、ちっぽけな子供に反撃されるとは思ってもみなかったのだろうか。
不意打ちで閃光を浴びた吸血鬼は、神に跪く罪人のように、その場にうずくまったまま動けなくなっていた。
神が創り給うた日輪などとは比べるべくもない、月光ほどの無慈悲さもなく、星の瞬きにさえ劣るまがい物の奇跡だというのに大袈裟なものだ。
足の悪い自分でも、とどめを刺すのは造作もないことだった。幸い家は教会だったから、聖別された狩用の道具には事欠かない。]
[吸血鬼はきちんと退治しなければ、より強力になって復活すると父から聞かされていた。
教えられた通りのことを全部試みた。教会に火をつけたのも火葬にするためだ。
…だけど、少しやりすぎたのかもしれなかった。初めての狩りだから加減がわからなかったのだ。]
(63) 2014/11/05(Wed) 11時頃